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- 2022.02.01
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企業主導型保育事業と事業所内保育事業の違いとは?設置基準について詳しく解説
企業主導型保育事業と事業所内保育事業の違いはご存じでしょうか。
どちらも企業が主体となって運営する保育施設ですが、制度の成り立ちや設置基準などが異なります。
この記事では、企業主導型保育事業と事業所内保育事業の違いを説明するとともに、それぞれの設置基準について解説します。企業内に保育園を設置したい方はぜひ参考にしてください。
企業主導型保育事業と事業所内保育事業
企業主導型保育事業と事業所内保育事業の概要を紹介します。
事業所内保育事業とは
事業所内保育事業とは企業が設置する保育所のことで、企業や病院などで働く従業員の子どもなどに対して保育サービスを提供します。
事業所内保育事業は内閣府「子ども・子育て支援新制度」に含まれる地域型保育事業のうちの1つであり、自治体の認可事業であるため認可保育園に分類されます。自治体によって募集の有無、設置数、補助金の内容が異なります。
事業所内保育事業については、以下のページで詳しく解説しています。
企業主導型保育事業とは
企業主導型保育事業は、事業所内保育事業と同じく待機児童対策と従業員の多様な働き方に応じた保育を提供するためのものです。
元々は事業所内保育事業に含まれていた、企業に設置された認可外の保育園を指します。この認可外の事業所内保育事業部分が、H28.4以降「企業主導型保育事業」として引き継がれることになりました。
認可外だった事業所内保育事業ですが、企業主導型保育事業になることによって認可保育園と同程度の運営費・整備費の助成が受けられるようになりました。
企業主導型保育事業については、以下のページで詳しく解説しています。
ただし、新規募集は令和3年度で一旦終了しているため、新規参入を検討している企業は別の形態を選択する必要があります。
企業主導型保育事業と事業所内保育事業の違いとは?
企業主導型保育事業と事業所内保育事業の違いについて解説します。大きく違いがあるのは以下の項目です。
事業所内保育事業 | 企業主導型保育事業 | |
---|---|---|
自治体の認可 | 必要 | 必要ない、ただし届出は必要 |
設置基準 | 各自治体による。「保育所の設置認可等について」等を遵守 | 各自治体の定める事業所内保育事業と同様の基準、このほか「認可外保育施設指導監督基準」等を遵守 |
近隣住民の子の受け入れ(地域枠) | 必須(定員の4分の1程度) | 必須ではない(定員の2分の1までの範囲で設定可) |
補助金・助成金 | 有 | 有 |
園児の募集 | 従業員枠は自社、地域枠は自治体が行う | 自社で行う |
認可の違い
最も大きな違いが認可の有無です。事業所内保育事業は認可事業ですが、企業主導型保育事業では認可外となります。
企業主導型保育事業が認可外保育施設なのは、国や自治体が短期間で保育ニーズを充足させ、より多くの企業が保育事業に参入できるようにするためです。認可がないということで、設置基準を満たしやすく、短期間で開所できるというメリットがあります。
事業所内保育事業は、市区町村の認可を受けて実施するもので、保育所を設置する自治体に認可申請と届け出が必要です。
配置基準と面積の違い
保育士の配置基準の違いは以下の通りです。
形態 | 企業主導型保育事業 | 事業所内保育事業 | ||
---|---|---|---|---|
保育園型(20人以上) | 小規模型 | |||
A型(6~19人以下) | B型(6~19人以下) | |||
資格 | 1/2以上が保育士 小規模保育事業B型と同じ |
保育士 | 保育士 | 1/2以上が保育士 |
配置基準 | 小規模保育事業B型と同じ
|
認可保育所と同じ
|
小規模保育園(A型)と同じ
|
小規模保育園(B型)と同じ
|
参考URL:厚生労働省「企業主導型保育事業実施要綱の概要」
また、保育室の面積は両事業ともに、乳児室またはほふく室として0~1歳児1人あたり3.3平方メートル以上、保育室または遊戯室として2歳以上の子ども1人あたり1.98平方メートル以上の広さが必要です。
2歳以上の子ども1人あたり、屋外遊戯場(園庭)として3.3平方メートル以上を確保しなければなりません。ただ、公園や広場が近くにあれば、屋外遊戯場として扱うことも可能です。
地域枠の違い
地域枠とは、従業員の子どもを除いた、地域の子どものための定員枠のことです。
事業所内保育事業の地域枠は義務です。定員は国の定める基準を目安に、各自治体が設定します。例えば、「定員16~20人の施設であれば5名まで(4分の1程度)」というように、保育施設の定員により地域枠の定員数が上下します。
企業主導型保育事業の地域枠は任意です。地域枠を設ける場合、総定員の50%以内と定められています。
助成金・補助金の違い
企業主導型保育事業と事業所内保育事業それぞれの助成金・補助金について解説します。
企業主導型保育事業の助成金
企業主導型保育事業の助成金は、公益財団法人 児童育成協会「企業主導型保育事業費補助金実施要綱(案)」によると、以下のように説明されています。
種目 | 金額(千円) |
本体工事費 基本単価(※) | 75,800~181,300 |
解体撤去工事費 | 1,670~5,381 |
仮設施設整備費 | 2,975~11,005 |
このほかに、土地借料加算などの補助金なども加算されます。
本体工事費は、基本単価とは別に、環境改善加算や特殊附帯工事加算、開設準備費加算、設計料加算なども含まれます。追加の助成金額は、それぞれの加算要件によります。工事の規模や工事内容によって金額は上下します。
事業所内保育事業の補助金
事業所内保育事業の補助金は、厚生労働省「平成28年度版 事業所内保育施設設置・運営等支援助成金のご案内」によると以下のように定められています。
種目 | 助成率など | 助成限度額 | ||
設置費 | 【大企業】1/3 【中小企業】2/3 |
【大企業】1,500万円 【中小企業】2,300万円 |
||
増築費 | 【大企業】1/3 【中小企業】1/2 |
増築 | 【大企業】750万円 【中小企業】1,150万円 |
|
建て替え | 【大企業】1,500万円 【中小企業】2,300万円 |
|||
運営費 | いずれか低い方の額 | 現員1人当たり年額34万円(中小45万円)×現員 | 【大企業】1,360万円 【中小企業】1,800万円 |
|
(運営に要した費用)-[施設定員(最大10人)×運営月数×月額1万円(中小5千円)]により算出した額 |
園児募集の違い
事業所内保育事業は、従業員枠の集客は自社、地域枠は自治体が行います。
企業主導型保育事業は、従業員や地域の保護者との直接契約が発生するため、事業主が園児を集客しなければなりません。
どちらの事業も、従業員や地域の保護者に保育園の魅力が伝わるように、ホームページやSNSなどのWeb媒体を上手く活用して集客につなげます。
ちなみに、保育園のホームページの立ち上げ方については、以下のページで詳しく紹介しています。
まとめ
企業主導型保育事業はすでに募集を終了しているので、企業が自社の従業員を預かる保育所を立ち上げるには、事業所内保育事業、もしくは認可外保育施設のどちらかになります。
令和2年「新子育て安心プラン」によると、国は令和3年度から令和6年度末までの4年間で約14万人分の保育の受け皿を整備すると公表しています。さらに、女性の就業率は令和7年に82%まで増加するとも予測されており、保育サービスの需要は高いままです。
国や自治体の後押しがある今、従業員向けに保育施設を開業するのは良い時期と言えるでしょう。
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